開業医の妻の役割
開業医の妻の役割 2009年07月01日
医院開業セミナーや成功する開業セミナーなどの各種セミナーは、どんどん出席なさるにこしたことがありません。なぜなら、だれも失敗を考えたくないからです。
(ただし、セミナー講師の力量はまちまちですので鵜呑みは禁物です。
さらに建築会社や証券会社、保険会社などの営業が根底にある「業者主催」も多いですので注意は必要です^^)
この私も、開業して3年目くらいまでは「うちほどうまくいっているクリニックはない」「うちほど良いスタッフに恵まれたクリニックはない」と信じて疑いませんでした。(大笑)
しかし、ちょっとした角度の違いが、その延長線を引いた時に大きく方向が違ってしまうものです。
ちょっとしたゆがみやほころびが出た時に、軌道を修正する方法や手段はなかなか語られません。
ですから、実はそのような情報はとても得にくいのです。
だれも失敗は見せたくないですもの・・・。
その「ゆがみ」「ほころび」を感じた時に、すぐさま早期に軌道修正できる力をつけていれば、私もあれほど苦しむことはなかったように思っています。
だからこそ、多くのセミナーでは語らることのないと思われる(?)ことを、経験をもとにした起死回生、七転び八起きの記録として綴っております。
前回の記事でも触れましたが、個人診療所の院長は孤独でもあります。
(前回の記事はこちら → http://blogs.yahoo.co.jp/harenihiamenohi3/2745179.html)
勤務医時代の医局やコメディカルとの他愛もない雑談がなくなり、そこに生ずるのは「雇用者と労働者」の関係。
趣味やその他のことを通して、一般社会とつながりを持っておいでの場合はいいのですが、中には一人でこもりたい先生もおいでです。
医師会の交流とて、なかなか本心を打ち明けることはできません。
他からの情報やアドバイスに耳を傾けるという機会が少なくなるのです。
ゴマをする業者の方との交流を好む方もおいでですし、そういうお付き合いしに偏ってしまいがちです。
危ないのは「裸の王様」になっていることに気がつかない場合です。
それであるならば妻が、軌道修正をしていく支え方をするのは大事なことではないでしょうか。
妻の役割として「夫を社会常識のある一人の人間として、心豊かに開業医として育てていく」ことは大きなことだと思うのです。
前回も記事にしましたように「患者さんの健康・命と向き合う診療」と「経営」の両立は難しいのです。
もし借金の保証人として妻がサインをし、印鑑を押したのでしたら、間違いなく妻も経営者としての責任を負うことになります。
それでは具体的にどのように支えていけばいいのでしょう。
その一つとして、ご主人が開業の意思をはっきりさせたら、開業場所を慎重に考えていく感覚を奥様にも持っていただきたいものです。
業者さんが作成してくる診療圏調査の報告書はデータが古くはありませんか?
メインストリートでも交差点で入りにくかったり、中央分離帯があって一方からのみの出入りにはなっていませんか?
近くに集客施設はありますか?
住宅街でも、共稼ぎが多くて日中はほとんど人がいないということはありませんか?
(開業医の妻の本音第1弾記事はこちら→http://blogs.yahoo.co.jp/harenihiamenohi/16782257.html)
また、報告書に上がってくる「推定患者数」が大風呂敷ではありませんか?
このようなことも多忙な勤務医の先生には考えが及ばないのです。
二つ目は、奥様もできるだけ業者との話し合いに立ち会うことをお勧めします。
なぜなら「べらぼうに高い器械」を「先生クラスの方でしたら、これくらいの性能の器械は必要です」の常套句でついつい手を出してしまうことになりかねないからです。
(我が夫もこれに引っ掛かりそうになり、レントゲン装置を1000万近いものにしそうになりました。)
借金の額はあっという間に膨らみます。
安易にリースを組んでもいいですか?
リース金利は年利何%かご存じですか?銀行の金利より高いのをご存じですか?
(1%高いとしたら、1000万で年10万。7年で70万余計に支払うことになります。)
たとえ妻が直接口を出さないとしても、このような視点を持ち、夫が冷静な頭でいるかどうかの判断はつくでしょう。
妻の存在は貴重です。
三つ目は、患者目線に立ったアメニティ分野や女性スタッフへの気配りなど、妻の目線こそが大事だと思われます。
四つ目は、スタッフの面接には「女の勘」ほど確かなものはないからです。
(詳しくは開業医の妻の本音 第1弾をご参照ください^^
主人が開業を決めた頃のお話 → http://blogs.yahoo.co.jp/harenihiamenohi/14348912.html
スタッフ採用のお話 → http://blogs.yahoo.co.jp/harenihiamenohi/5338648.html)
最近近所に大きなクリニックが開院しました。
開院の挨拶はもちろん、挨拶状1枚すら来ていません。
開業医のご子弟の方ですので、経済的には親の援助があっての開業のように思われますが、患者さんが紹介状を持ってきても当院では「こんなクリニックあったかな?」という会話が生ずるのです。
「あ〜、オープンしたんだ」という認識を持っても、患者さんをご紹介するにも躊躇して別の先生の所にご紹介してしまいます。
奥様が「挨拶に行きましょう」と促して菓子折を準備したり、あるいは近隣医師会の先生あてに挨拶状をお書きになるでけでずいぶん違うのになあと思いつつ、ご立派でモダンなデザインの建物に、患者さんの影がないクリニックの脇の道路を通ることがあります。
そして大事な五つ目です。
医師になる方は基本的に頭の良い方です。
その頭の良い方に、軌道修正をしたり、航海で迷わぬように灯台となって灯を照らし続ける役割が妻にはあると思うのです。
そのため、妻も一般社会常識を身につける心がけが大事なのではないかと思います。
経営者として、夫を支える自分。妻としての自分。母としての自分。
同様に、医師として、開業医として医師として夫に何を望むか。父親として夫として何を望むか。
夫だから、開業医だから経営者だからと、夫の機嫌取りをしてはいけません。
そしてまた、社会に出た時に、奥様、あなたの行動は人に受け入れられていますか?
経営者であるご主人や奥様が社会常識から逸脱しているために、スタッフが離れて行ってしまうケースも多いのです。
いつもわが身を振り返ってみることは大事なことです。
もし、乗り越えることができそうにない問題にぶつかったら、専門の方を探してみるのも時には必要です。合う方に出会うまで、探してみることも大事なことです。
人間としての芯がぶれない強さ。
人から勝負を挑まれても同じ土俵に乗らず、負けることのできる強さ。
あなたご自身が常識ある人間として生活すること。
医師として、社会人としての「心」と本物の「命言葉」を伝える診療ができる夫の支え。
これこそが開業医の妻としての大事な役割ではないでしょうか。